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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)678号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人石橋省吾の上告趣意書第一點について。

原判決が證據に引用した第一審公判における被告人の自白によれば、判示第二事実のごとく、被告人等が共謀して、強盗をした事実を認めることができる。かりにその際における被告人の所為が、所論のごとく、見張りを命ぜられて、終始家の外部にうろうろしておったに過ぎないとしても、被告人が、他の共犯者と本件犯行について共謀をした事実が認定せられる以上、強盗の実行行為をした他の共犯者と共に、共同正犯の罪責を免れないことは、當裁判所の判例の示すところによって明らかである。しかして、原判決は右事実を認定する證據として、右被告人の自白の外、證人萬谷喜美子の豫審における被害顛末の供述調書を擧げているのであって、同調書によれば、本件強盗の事実に照應する被害顛末を認定することができるのであるから、原審は、所論のように、被告人の自白を唯一の證據として、右犯罪を認定したものではないのである。もっとも、右被害者の供述自體では被告人が本件強盗に参加した事実は認定できないけれども、自白を補強すべき證據は、必ずしも自白にかかる犯罪組成事実の全部に亘って、もれなく、これを裏付けするものでなければならぬことはなく、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足るのであるから、右豫審における萬谷喜美子の供述によれば、當夜同人方に數人の犯人が押入って、強盗の被害を受けた顛末が認められ、被告人の自白が架空の事実に關するものでないことは、あきらかであるから、右供述は被告人の自白の補強證據としては十分であるといわなければならない。論旨は理由が無い。

同第三點について。

原判決が引用した豫審調書によれば、被告人は判示第四の詐欺の事実について、判示同旨の供述をしたことは明らかである。しかして、原判決は右自白の外、證人中村むめの豫審における供述調書をも證據としているのであって、この供述は所論のように右詐欺事実の巨細に亘って、もれなく、右自白の内容と一致するものでないとしても、右自白の真実性を保障するものとしては充分であるから、右供述は右自白の補強證據となり得ることは、第一點説明の趣旨に徴して明瞭である。論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よって刑事訴訟法第四百四十六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎)

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